S&Pグローバル・レーティングは、暗号資産レンディングボールト向けの「Vault Risk Assessment(VRA)」を開始した。現在、市場規模は約100億ドル。大手格付け会社は、この新たなスコアが信用格付けではないことを強調している。
レンディングボールトとは、預かり資産を集め、それらを借り手に貸し出すブロックチェーン上の投資信託のようなもの。預かり資産は過去2年間で6倍超に増加したが、開示基準はいまだにボールトごとに異なる。
S&Pによる暗号資産レンディングボールトの評価手法
発表によると、評価は6つのリスク分野で構成される。内容はポートフォリオの信用品質、流動性のミスマッチ、運用管理者、ブロックチェーン、プロトコル、ボールトのセキュリティとガバナンスが含まれる。
運用管理者とは、ボールトの資本をどの借り手へ配分するかを決定する企業を指す。運用判断により、市場ショック時に預金者が資金を回収できるかどうかが左右される。
暗号資産レンディングボールト向け評価は、将来投資家が損失を被る可能性についてS&P側が見通しを提示するもの。なお、ボールトが掲げる利回り自体には言及しないとしている。
S&Pグローバル・レーティングのグローバル格付けサービス責任者、ジェームズ・ウィムケン氏は、業界内での開示のばらつきに言及した。
「・・・この黎明期の市場には、複雑な構造と開示基準の違いが内在しており、標準化された独立的なリスク分析が明らかに求められている」 ジェームズ・ウィムケン氏、コメント
ウォール街がDeFiリスク評価へ関与する狙い
VRA導入はデジタル資産市場へのS&Pの本格参入の一環。9月には監査会社OpenZeppelinの買収や、データ提供企業Kaikoへの出資も発表した。
この前には、同社が分散型金融(DeFi)プロトコル「Sky Protocol」(旧MakerDAO)に初の信用格付けを発行したと公表。ビットコイン担保による証券化案件の格付けも行った。
一方、ボールト関連のリスクは既に現実の損失にもつながっている。8月にはTerm Labsでの運用管理者による悪用により、約850万ドルが流出した。
規制当局もこの問題に着目している。7月には証券取引委員会(SEC)のヘスター・パース委員が、暗号資産ボールトやレンディングプロトコルが連邦証券法の適用を受ける可能性を警告した。
独立評価は、暗号資産レンディングボールトを第三者のリスクチェックが必須な銀行やファンドでも提案しやすくする可能性がある。今後は、運用管理者が表面利回りよりもS&Pの評価で競争し始めるかが鍵となる。
jp.beincrypto.com でPhil Haunhorstによるオリジナル記事 S&Pグローバルが100億ドル規模の暗号資産貸付にリスク格付け導入 を読む